「口コミって、何件くらい集めたら意味があるんですか?」
社長や院長とお話ししていると、必ずと言っていいほどこの質問をいただきます。
50件? 100件? ——気持ちはよく分かります。ライバル店のGoogleマップを開いて、星の数と件数を見比べて、うちは全然足りないなとため息をつく。私もクライアント先で何度もその場面に立ち会ってきました。
でも、実際の現場で起きていることを見ていると、答えはもう少し身も蓋もありません。
「2件」からでも効き始めます。
しかも「何件あるか」より「何と書かれているか」のほうが、はるかに問い合わせを左右します。
ただし、この「2件」が持つ意味は、業種によってまるで違います。同じ2件でも、頭ひとつ抜ける業種と、順位はびくともしない業種がある。そこも含めてお話しさせてください。
※本記事の事例は、守秘義務の関係で業種・地域・症状などの詳細をすべて変更したうえでご紹介しています。
口コミは「看板」ではなく「店先の行列」

まず、多くの方が口コミを誤解しています。
口コミを「看板」だと思っている方が多いんです。大きくて立派なほうがいい、目立つほうがいい、だから件数を稼ぎたい——と。
違います。口コミは看板ではなく、店先の行列です。
看板は、こちらが言いたいことを書く場所。行列は、お客様が勝手にできてしまうもの。そして通りがかりの人が見ているのは、行列の「長さ」だけではありません。
「あの人たち、何を待ってるんだろう?」
そこが知りたいわけです。ラーメンの行列なのか、パンの行列なのか。それが分かった瞬間に、はじめて「じゃあ私も並ぼうかな」が起きる。
つまり、行列の中の人が何を目当てに来たかを、口に出してくれているかどうか。これが口コミの本当の価値です。
2件の口コミで、問い合わせの中身が変わった
顧問先のある治療院での出来事です。
その院は、いわゆる「何でも診ます」という打ち出し方をしていました。腰も肩も膝も、ケガも慢性の不調も。実際に技術はあるので嘘ではありません。ただ、Googleマップの口コミには「先生が親切です」「丁寧に診てくれました」といった、当たり障りのない言葉ばかりが並んでいました。
動きがあったのは、院長ご自身の判断でした。
特定の症状で通われていた患者さん2名に、続けて口コミをお願いされたのです。
しかも、たまたま声をかけたわけではありません。数ある得意分野のうち、いちばん自信があり、かつ地域で競合が手薄だった領域——仮にその症状を「肩の痛み」としておきます——を狙って、意図的に、続けてお二人にお願いされました。
お二人とも快く書いてくださいました。「長年の肩の痛みで通いました」「肩が上がらなかったのが、〇回目で楽になりました」——そんな具体的な文章です。
その後、しばらくして院長から連絡がありました。
「最近、肩の相談で来られる方が増えてるんですよ」
たった2件です。星の数も、総件数も、ほとんど変わっていません。それでも問い合わせの「中身」が変わりました。
なぜ2件で効くのか——お客様は「自分の言葉」を探している

理由はシンプルです。
検索する人は、自分の症状を自分の言葉で打ち込むから。
「肩が上がらない 〇〇市」と検索した人が、Googleマップの結果一覧を見る。そこに「肩が上がらなかった」と書かれた口コミが表示される。
このとき、頭の中で何が起きるか。
「あ、私と同じ人がいる」
これです。院のホームページに「肩関節疾患にも対応しております」と百回書くより、口コミに一回「肩が上がらなかった」と書かれているほうが強い。
ホームページはこちらの言葉、口コミはお客様の言葉です。
そして検索している人が使うのは、いつだってお客様の言葉のほうなんですね。私はよく「口コミは翻訳機です」とお伝えしています。専門用語で語られている自社のサービスを、お客様が使っている日常語に翻訳して置き直してくれる装置。しかも無料で、しかも第三者の口から。
だから2件でいい。むしろ、狙った言葉が入った2件のほうが、何も書かれていない50件より効きます。
BtoBなら、2件は「異例の成果」です
もうひとつ、まったく違う業種の話をさせてください。
産業用の資材を扱う、BtoB企業でのことです。取引先は法人ばかり、担当者同士のやりとりで仕事が回っていく世界。ホームページはあるものの、Googleマップの口コミは長らくゼロ件でした。
そこで、訪問時にお渡しできるQRコードを用意しました。名刺サイズのカードにして、営業担当が持ち歩く。
翌日、さっそく2件の評価が入りました。
「たった2件か」と思われるかもしれません。でも、BtoBの製造業でこれは相当大きな成果です。
理由は、単純にやっている会社がほとんどいないから。
飲食店や美容室のGoogleマップを見れば、口コミが200件、300件と並んでいます。あの世界で勝負するのは大変です。でも製造業や専門技術系のBtoB企業のGoogleマップは、多くが手つかずのまま放置されています。
満員電車で座席を探すのと、ガラガラの車両に乗り込むのとでは、労力がまるで違う。
BtoB企業のGoogleビジネスプロフィールは、まだガラガラの車両です。今から地道に座っておけば、数年後にはそれ自体が資産になります。口コミは貯金と同じで、始めた時期がそのまま差になって効いてきます。
ただし「2件で効く」の中身は、業種でまるで違う

ここまで治療院とBtoB企業、2つの事例をご紹介しました。どちらも2件です。でも、起きたことはまったく違います。
同じ2粒の種でも、畑によって育ち方が変わる。ここを混同すると「うちも2件集めたのに何も起きない」ということになります。ご自身の業種がどの畑にあたるか、当てはめてみてください。
口コミ激戦区(飲食店・美容室・歯科医院など)
競合が100件、200件と持っている世界です。ここで2件足しても、順位はびくともしません。
この土俵で件数勝負を挑むのは得策ではない。効くのは冒頭の治療院と同じく、内容のほうです。「〇〇で困っていた」という具体的な言葉が入った口コミを、狙った領域に絞って積む。総合力では勝てなくても、特定の入り口だけは押さえる戦い方になります。
数の勝負を降りて、言葉の勝負に持ち込む。激戦区ほど、これしかありません。
手つかずの業種(BtoB製造業・士業・専門工事など)
競合の口コミが0件から数件、という世界です。ここでは2件がそのまま効きます。
内容以前に、件数と「動いていること」自体が差になる。先ほどの資材メーカーがこちらです。ガラガラの車両にいち早く乗り込むのと同じで、早い者勝ちの側面が強い領域です。
検討期間が長く、単価が高い業種(住宅・リフォーム・葬儀・法人向け設備など)
一生に何度もない買い物、あるいは数百万円が動く判断。この領域のお客様は、口コミを「数える」のではなく「読み込みます」。
星の数を眺めて終わり、ではない。長文の口コミを一つひとつ、目を皿にして読む。だからここでは、中身の濃い1件が、薄い5件を上回ります。「どんな不安があって、どう解消されたか」まで書かれた口コミが1件あるだけで、検討中の方の背中を押します。
地域の規模でも変わります
同じ業種でも、都心と地方では母数が違います。人口の少ない地域なら、そもそも競合の口コミも少ない。「うちの業種は激戦だから無理」ではなく、「うちの商圏で見たときにどうか」で判断してください。
Googleマップは全国大会ではなく、地区大会です。隣町の状況は関係ありません。
返信は「全部返す」か「全部返さない」か、どちらかに
口コミが集まり始めると、次に必ず出てくるのが返信の話です。
ここでひとつだけ、守っていただきたいルールがあります。
返信するなら、すべてに返す。返さないなら、すべてに返さない。
いちばんまずいのは、その中間です。
星5の口コミには丁寧に返信して、星2の口コミは黙って放置する。あるいは、褒めてくれた人にだけお礼を言う。
これ、見ている人にはすぐ分かります。
同窓会で、特定の人にだけ話しかけている人。あの気まずさに近いものが、そのままGoogleマップ上に残ってしまう。「この会社、お客を選り分けてるな」という印象は、口コミの内容そのものより悪い影響を残します。
そして現実的な判断としては、件数が少ないうちは返信したほうがいい。Google自身も返信を推奨していますし、まだ10件、20件のうちなら手間もたかが知れています。
100件を超えてから「やっぱり返そう」と決めるほうが、はるかに大変です。
星だけの評価にも、一言でいい
「コメントなしで星だけの評価には、何を返せばいいんですか」
これもよく聞かれます。
答えは、一言でいいです。
「ご評価いただきありがとうございます。またお越しをお待ちしております」
これで十分。何も書かれていない相手に長文を返しても、読む人はいません。
一方、コメントが書かれている口コミには、そのコメントの言葉を拾って返すのがコツです。
「肩の痛みでお困りとのことでしたが、楽になられたようで何よりです」
こう返すと、返信文の中にも「肩の痛み」という言葉がもう一度登場することになります。お客様が書いた言葉を、こちらがなぞる。それだけで、そのページに込められた情報の密度が上がります。
キャッチボールと同じで、投げられたボールを拾って投げ返すから会話になる。別のボールを取り出して投げても、それは会話ではありません。
明日からできる3つのこと
長くなったので、整理します。
- 自分の商圏で、競合が何件持っているかを見る
話はここからです。競合が数件なら件数勝負、100件超えなら言葉勝負。畑が分からないまま種を蒔いても育ちません。
- 「どの言葉で見つけてほしいか」を先に決める
すべての強みを平等に扱わないでください。ひとつ選ぶ。競合が手薄で、自社がいちばん自信のある領域を。
- その領域のお客様2名に、口コミをお願いする
100人にお願いする必要はありません。狙った2名です。
- 返信するなら、全部返す
一言で構いません。ただし、始めたら続ける。
「お願いする仕組み」がない会社が、いちばん多い
ここまで読んで、「言っていることは分かる。でも、お客様に口コミをお願いするのが気まずい」と感じた方——おそらく、それが本音だと思います。
実際、私たちがご相談を受ける中でいちばん多いのが、口コミの重要性は分かっているが、お願いする仕組みがないというケースです。
その場のノリでお願いする。忘れる。数ヶ月経って思い出す。また忘れる。これでは資産は貯まりません。
当社では、口コミ管理ツール「クチコミマーケ」をご提供しています。
- お客様が迷わず投稿できるQRコード・専用ページの発行
- 集まった口コミの一元管理と、投稿状況の見える化
- 業種に合わせた返信文の作成サポート
- 悪い評価が入ったときの初動対応のご相談
「気まずいからお願いできない」を、「渡すだけで済む」に変えるための道具です。
冒頭の治療院は、院長ご自身の判断と行動で結果を出されました。素晴らしいことですが、正直に言えば、あれを毎月続けられる方はほとんどいません。院長の集中力と記憶力に頼っている状態だからです。忙しい月は必ず抜けます。
仕組みというのは、気合いが切れた月でも同じことが起きる状態のことです。
口コミは、集め始めた時期がそのまま差になります。今日の2件が、3年後の資産になる。逆に言えば、今日始めなかった3年分は、あとから取り返せません。
Googleマップの口コミについて「うちの業種でも意味があるのか」と迷っていらっしゃる方は、一度ご相談ください。業種と地域を伺えば、競合がどれくらい手をつけているか、現状をお調べしたうえでお答えします。


